室戸スカイライン（No.075）
稜線から岬へ飛び出し、海と空の大きさを実感する。
太平洋に突き出た岬の形をなぞるように国道55号が鋭角にぐるりと回る。徳島方面から走ってくると、この岬から太平洋が広がるような感覚がある。実際の瀬戸内海は紀伊水道より北側で、それまでも太平洋の広々とした海原も見えていたのだが、勝手なものである。
この感覚を違った形で味わえる道がある。室戸市中心部から岬の先端に向けて走る室戸スカイライン（県道203号）で、そのほとんどを樹木に遮られて、途中にある展望台からしか大海原を遠望できない。しかし、岬の手前で道は急激に標高を下げ、大海原が眼前に広がる痛快さはこの上ない。
岬には大海原を見据える幕末の志士・中岡慎太郎の銅像がある。坂本龍馬とともに明治維新へ向けて尽力し、維新前夜1867年に龍馬とともに京都にて暗殺され、30年の短い生涯を閉じた。坂本龍馬の人気と知名度があまりにも高いために、その陰に隠れることも多いが、維新への貢献度は龍馬以上ともいわれている人物である。
桂浜の坂本龍馬、横浪黒潮ラインの武市瑞山（半平太）、足摺岬の中浜万次郎（ジョン万次郎）など高知の海沿いには幕末の偉人像が多いが、もっとも海に近く荒々しい風景がこの室戸岬である。その短くも太い生涯を思う時、この岬の風景にはやはり慎太郎が似合うと思う。スカイラインの絶景が短くも鮮烈なように。
室戸スカイラインの津呂山展望台からは、道路からは見えない太平洋の広がりも見える。
◎正式名称／県道203号室戸公園線
◎区間距離／9km（室戸市-室戸岬）
◎冬季閉鎖／なし
◎撮影時期／6月上旬
土佐浜街道（No.076）
瀬戸内から土佐の海辺をじっくり味わう歴史の道。
高知と四国各地の要所を結ぶ道を総称して土佐街道と呼び、そのなかでも海側で徳島城下と高知城下を結んでいたのが土佐浜街道であり、現在の国道55号にあたる。室戸岬の前後30㎞ほどは、ほとんどが海沿いを走る快適なシーサイドルートとなる。大小さまざまな美しい港が点在しており、駆け抜けるだけではもったいない景色がある。高知県香南市内に入ると内陸部に入るので、ここからは県道14号・黒潮ラインにスイッチするのがお勧め。
よさこい節にも唄われる月の名所・桂浜。弓状に白浜が伸びる美しい海岸。
◎正式名称／国道55号
◎区間距離／約200km（徳島市-高知市）
◎冬季閉鎖／なし
◎撮影時期／6月上旬
横浪黒潮ライン（No.077）
崖の上をゆく快走路から黒潮洗う大海原を眺める。
高知市の西、土佐市と須崎市にまたがる横浪半島を縦断する県道47号の通称が横浪黒潮ライン。リアス式海岸の入り組んだ断崖 上を走りながら、太平洋を眼下に眺めるルートで、比較的標高の低い場所を通る土佐浜街道や海側の展望が開けない国道56号などにはない豪快な風景が楽しめる。途中の須ノ浦パーキングには武市瑞山の銅像が建っている。また、半島の北側、内ノ浦湾に沿った県道23号も情緒ある港風景が楽しめるから、ぐるりと周回してみるのもいいだろう。
◎正式名称／県道47号横浪公園線
◎区間距離／19km（土佐市-須崎市）
◎冬季閉鎖／なし
◎撮影時期／6月上旬
ご当地情報
★メインカット撮影ポイント
A：キラメッセ室戸鯨館
土佐に伝わる伝統的な鯨文化に触れる
室戸市中心部よりやや西側に位置する国道55号沿いの道の駅。レストランでは刺身やたたき、ステーキなどの鯨料理をはじめ、土佐の太巻きなど郷土料理、新鮮な魚貝を使った海鮮料理など豊富なメニューが味わえる。併設の鯨館ではクジラの骨格標本や、古式から近代の捕鯨道具など300点以上を展示し、鯨の生態や捕鯨文化を学べる。
●入館料300円／9:00-17:00（冬季は16:00まで）／月曜休館／室戸市吉良川町丙890-11／Tel:0887-25-3377
B：野良時計
120年以上の時を経て刻み続ける確かな時間
安芸市土居にある櫓時計。時計が珍しかった明治20年頃に、地元の地主であった畠中源馬氏がアメリカ製の時計を分解・研究し、そこから独学で制作した。田園風景のなか、日本家屋の櫓に備えられた時計は、同じ時を刻んでいるのに、なぜかのんびりした時間が流れているように感じる。現在、国の登録有形文化財に指定されている。
●見学自由（外観のみ）／安芸市土居／Tel:0887-35-1011（安芸市商工観光水産課）
C：四国自動車博物館
世界の名車が集まるマニア垂涎の博物館
香南市の中心部、野市町にネッツトヨタ南国が開設した博物館で、四輪車34台のほかに二輪車30台も展示する。ポルシェやアルファロメオなど欧州のレーシングカーをはじめ、トヨタ2000GTやトヨペットクラウンなどの往年の国産車などをフルレストア、フルメンテナンスの状態で保存・展示。マニア必見の施設となっている。
●入館料800円／10:00-17:00／月曜休館／香南市野市町大谷896／Tel:0887-56-5557
ご当地情報
★メインカット撮影ポイント
D：手結港
歴史と情緒ある港と珍しい可動橋を訪ねる
土佐くろしお鉄道・夜須駅の海側にある手結港の最奥部には、江戸時代初期に室戸や津呂とともに造られた堀込港湾が残っている。河口の岩盤を人手によって掘削、石積みした手結港は日本最古の堀込港湾ともいわれ、情緒豊かな美しさが残っている。また、この港への入り口に掛かる橋には、片側跳ね上げ式の珍しい可動橋が架かる。
●見学自由／香南市夜須町手結／Tel:0887-57-7520（香南市商工水産課）
手結港の可動橋。1日のうちで渡河可能な時間よりも開いている時間のほうが長いという。手前には踏切のように遮断機がある。
E：土佐タタキ道場
鰹のワラ焼きを体験し、できたてのタタキを
桂浜とは浦戸大橋を挟んだ県道14号沿いの“ドライブインかつお船”敷地内にある体験型食堂。下ごしらえした獲れたての鰹を自ら選び、自らワラ焼きにするという珍しくも美味しいタタキ定食(1300円)がいただける。なお、鰹がなくなり次第オーダーストップ。敷地内にはカフェや喫茶・定食の店もあるのでひと休みに最適。
●11:00-15:00（売り切れ次第終了）／定休なし／高知市仁井田201-2／Tel:088-847-3255
F：三陽荘
大海原を眼前にする天然温泉のお宿
横浪黒潮ラインの入口、宇佐湾に面した絶好のロケーションが魅力の天然温泉旅館。宿泊は高知ならではの山の幸、海の幸を存分に味わうコースや鯨ウオッチングとのパック、お遍路さん向けパックなど、さまざまなプランが用意されている。塩分を含んだ泉質が保温効果を高める温泉は庭園露天風呂と大浴場があり、日帰り入浴も可能。
●1泊2食付8,640円-／日帰り入浴600円（11:00-21:00）／土佐市宇佐町竜504-1／Tel:088-856-0001
室戸岬東部にある御厨人窟（みくろど）は弘法大師伝説の残る海蝕洞。室戸という名も、岬の洞窟（室の戸）という意味があるという。
アクセスガイド
徳島道・徳島ICから高知道・高知ICまでは約150km。瀬戸大橋から四国入りした先の坂出ICからは高松道経由で高知ICまで102km。高知ICから室戸岬までは国道55号経由で約93km。なお、かつては高知港まで大阪からのフェリーが運航していたが、2005年に廃止。徳島へは紀伊水道対岸の和歌山、そして東京からのフェリーが運航している。
観光情報
室戸市観光協会 Tel:0887-22-0574
なはり観光文化協会 Tel:0887-32-1288
安芸市観光協会 Tel:0887-35-1122
香南市観光協会 Tel:0887-56-5200
高知市観光協会 Tel:088-823-4016
土佐市産業経済課 Tel:088-852-7679
高知県観光コンベンション協会 Tel:088-823-1434
文:佐々木 節／写真:平島 格
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